新聞こぼれ話

不定期に新聞を発行しています。ここでは、その新聞『ささらほうさら』に載りきらなかったこぼれ話をアップしていきます。

 

 


2023年 昨年は一度も発行しませんでしたね、てへ。の巻

こぼれ話

 

対談形式で記事を載せよう、と対談(のようなこと)をしたものの、長くて新聞にはちょっとボリュームがありすぎるわねってことで、対談まるごとこちらにきました!

 

 

 

 

①映画『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』の話から…

 

(現在ネットフリックスで視聴できる映画。二人でよかったな~!と話しています)

 

加藤: ピノキオが動き出したときのやんちゃぶりがすごかった

   「知らない」ってそういう力が出るんだな~

安田: あーそれはいいですね~

加藤: 情報とかがない分…モノとかもちことか

    知ってることが多いと「これはやらない方がいい」とかある。

安田: 知らない方が動ける…  

    「これが悪い」とかない。悪気がない。「これもたのしい!」「わーっ、これもたのしい!‼」

    目に入ったものが全部楽しくて、わ~っ!てなる。すばらしい。…悪意とか持ってないんだよね、生                     

    まれた時に。ただただ目に入るものに好奇心があってそのまんま動いて…

    きっと人間でも他の生き物でも生まれてからそういう風にしていくんだよね。

    「これやっちゃいけません、あれやっちゃいけません!」って言われて。…生き物だと生まれた時

    “赤ちゃん”ていう状態があってさ、たどたどしいじゃん動きが。そこまでの無茶な動きが。出来ない。

    けど、ピノキオみたいな人形だといきなりMAX動けるから。

加藤: すごいですよね。

    動くものと中身のバランスが、生き物とちがう。

安田: あの狸は…生まれた時からオッサンですよ。

    注:もちこ、あの狸…1年やっていた稽古でそれぞれテーマにしたキャラクター

加藤: そうですよね!

    以前稽古で試してやった、いつから意識が(置き物の狸に)めばえたか…みたいなの、不思議でした。

    気付いたらもう、おじさんでいる。昔はどうだとか(記憶が)ないんですもんね。でも、無くても困ら   

    ない…困らないのかな?そいうこと言うの、人間だけかな?

安田: 動物とかはありそうだけどね、生きていくにはね。

    猫とか、親に教えられなくても子ども育てて、とかネズミ捕ったりとかできたからね。

    なんだろうね~…制御の仕方みたいなのを生きてる間に知ってく、んだよね。

加藤: それだ~。制御するんですよね。

安田: こんなに叩いたら相手がケガをする、とか。火の中に飛び込んだら死ぬ、…とか!

加藤: あー 制御しない瞬間がずっと続いてるんですね。

安田: その制御していないパワーを、何か自分にとってもの凄く必要なことがおこった時に解放できるか

    ら…もちこみたいなことができる…のかな。

    本当はできることを、生きているうちにそこまで過剰に出してはいけない、って思ってそれが普通

    だと思って生きてるけど、…「栓」を外すと、いけちゃう…!

    その時、人は山を五つ越えられる…

加藤: パワーを出して、「やるぞ!やるぞ!」というよりも、“外す”ことでいけちゃう、っていう。

安田: うん。気づいたらいっちゃってた、っていう。無意識で外すんだよね。

加藤: 外れる…すごいなー

安田: ね。その外れる栓だか何かわからないけど、「ポンっ」て。

加藤: みんな「栓」してますよね、やっぱりね…

安田: みんな栓してますよー

    …栓しない、人形だったら栓しない状態でもけっこう持つんだろうけど、動物とかだと栓しない状

    態でいたらあっという間に使いきっちゃう。

加藤: うん。使い切っちゃいそうですよねー

安田: 子どもとか子犬がいきなり、バタっ、と倒れるみたいなね。

    …なりどんはまたちょっと違うのかな。なりどんは自分でおさえてるよね。

    注:なりどん、おなり…NETFLIXで視聴できるアニメーション『ONI』に登場するキャラクター

加藤: 体は大きいけど、わりとまともな…  

    「うぉ~っ!!」ってなったときありましたね。なんでだっけ。

安田: おなり人間だってバレて、なりどんを岩に封じ込めて、みんなでおなりを排除しようとして、岩

    から出てくるときに悪魔みたいになって…

    知らないもの、は、怖いから

 

加藤: …恋って、栓が抜けやすいんですかね

安田: 恋は栓が抜けやすいんですかねー

加藤: 恋じゃなくても、命の危機みたいな大変なことが起きたときかな

安田: やっぱりそうなのかな、恋っていう感情は普段の家族や友達に向けてるものと違うじゃんか。

    自分の身におこると、かなりビックリすることで…

    そういう意味ではその、命にかかわることと同じくらい外れやすくなるんじゃないかな。

    「ああ~~ドウナッチャッタノ!?」みたいな。

加藤: 緊急事態。

安田: 年齢とか性格によって種類は違うけど。

    みんながみんな恋に狂うわけじゃないだろうけども。

加藤: 普通の状態ではない感じがする。

安田: そういうことで言ったら、もちこはリミッターが外れやすいような恋をする少女だけど、たぬきち

    は別にリミッター外すわけじゃないんだよね。

    …おっちゃんだから。

加藤: おっちゃんだもんな~

安田: (稽古の中で)週刊たぬきちを1年やっていたときに、「ポン子ちゃんのピンチ」みたいなのを設定し

    てやったことがあって、そういうタイミングみたいなのは…

加藤: 年齢…おっちゃんだからかな

安田: 年齢と性格? 笑

    …なんとなく民話とか童話とかお話の中だとさ、リミッター外す役ってなんか「女の子」にあてがき

    されちゃうことが多いような気がするんだけど…それはどうなんですか~笑 と。思うんだけど。

加藤: そうですねー。男だと…

安田: 女の子は「っポーーーーンッ!!!!」て外れるのかな。

    …ツルゲーネフの『初恋』って読んだことある?

加藤: ないです

安田: あれは、男の子の方のリミッターが少し外れるような話なんだけど。でも、なんか外れ方が暗いん

    だよね。

    ポーーーン!ってなんないんだよね。もんもんもんもん…翻弄されて悶々とするだけでさ。どーーー

    んっ!ていかないんだよね。

加藤: うーん 男の、ってない気がする。

安田: 道成寺だってさ、行くのは女の子じゃない。

加藤: そうですねー!

    男の方は怖くて逃げたり…

安田: 清々しいほどリミッターが外れたりっていう、そういうお話を読んだことがないような気がする。

    陰湿な悩みを抱えているようなのは読んだことある気がするけど。

加藤: あんまり思いつかない~。

    …これは違うかもしれないけど、吉四六さんの、外れちゃう感じは。

安田: あ~やっぱりね。ちょっと…なんといったらいいのか。

    吉四六さんの存在はちょっとピノキオに近いじゃない。生まれて育てられていくなかで抑えられて 

    いるものの質が違うんだろうけど。

 

    …なんかすごいマジメな話してません? 笑

   

 

 

 ②揺らがない、という話

 

 

安田: 揺らがない、ってステキだな、と本当はみんな思ってるとおもいます!

加藤: 実際に揺らがないと、何か言われたりするのかな

安田: ゆらがないっていうのは難しいですよね。たたかれますよね~

加藤: たたかれる!

安田: そしてゆらがない猫があそこでオシッコをしている…

   対談中、そばにいた猫がトイレではないところで排尿…。アッピールしたいことがあるときにするそう

   です♡

    …(民話の)炭と豆と藁が川を渡るとかだって、そんな馬鹿な!って思うけど、成功してほしい!って 

    思わず応援したくなる。

加藤: そういう世界はいいなあ、と自分は思ってるんだよなー多分。

安田: やりたいことに全力でいく!

加藤: ゆらがないで…芽が出たらもう伸びる!とか、自然物ってそうですかね。水がなかったら枯れる!

安田: 水飲みすぎても枯れる!

加藤: ゆらがないですよね。「あ~こんだけのんじゃってどうしよう」とかない。

    揺らがないせいで上手くいかないこともあるんだろうけど。その「うまくいかない」という考え自

    体が人間寄りなのかな。

安田: そうかもね。

    疑ってたらできないもんね。人間はちょっと頑張って「おれは揺らがないぞ」って、そういう人は

    すごい意識して人に言われても負けないぞ!って感じでゆらがないけど…でも多分そういうんじゃな   

    い。

    もちこがやったのはそういうんじゃない、自然に、ポンっと。

  

    壁に掛かっている鳥の写真のカレンダー、鳥がたくさん群れている写真を見て…

    こういう鳥たちがみんな同じ方向むいてる時の、この鳥たちの意識ってどうなってるんだろうね!

加藤: フシギ~

安田: あわせてしまう、じゃないけど、なる、んだよー

 

 

 

 

 

  ③ロマンス1.5からの…という話

 

安田: 素直な自分に従えば、去年からやってた稽古でそれぞれ作品をつくるという中で、「今、本当にお   

    どってみたいことをおどってみる」というのを知ちゃんも私もやったわけで、だからこそこれが持 

    続していきたいということを伝えたいようでもあり、「もうそれならいいです」って言われたらど 

    うしよ、みたいな及び腰で…笑

加藤: なかなか今までこういう長いスパンでっていうのは無かったんで…

    今までで、そういうことはありましたか?

安田: 私は…無いかなー。毎回毎回自分の、その時のマイブームが変わるから、1年とか置くじゃん。1年 

    半とか、そうすると自分のブームがかわってるから出し物が変わる、みたいな。

    1回、1月に砧でやった時に、あそこで…あれはあそこでの完成だったと思うし、例えば北綾瀬の工 

    房を見せてもらった時に「ここで何かやりませんか?」って笹ぴーが言ってくれたときに思ったこ 

    とは、「じゃあ違うな」ってことだったんだよね。ここでもし何かやるとしたら、ロマンス~じゃ 

    ないなって。

加藤: 『なしで、』が終わってからだから…

安田: 『なしで、』終わってからあの稽古に入ったんだよね。

加藤: 時間自体も長くやっているというのもあるし、1回作品としてみんなでやって…また更に、というの

    はなかなか無い経験だな、と。

安田: あそこでやる、っていう制限であんまり長く出来ないとかっていうのでもの凄く割愛してソロを繋 

    げた、みたいな。狸囃子が出たくらいで。そういう感じだったけど。

    気をつけないと…何をやってるのかわからなくなる位、要素が多い。

    

    …そんな現段階ではありますが、ソロパートの稽古をやってみようかとなった時に、知ちゃんだった 

    らどういうところから始めたいですか?

加藤: 考えちゃう。

    前はもちこが持っているエネルギーみたいなのに、最初読んだときすごい惹かれてやっぱりあの、

    山を走るところ…というのがすべてだったんだけど。

    1月終わったあとにまた稽古したり話したり、他の、もちこ(つつじのおとめ)じゃない民話を読んで  

    た時に、実際山を走るのはもちこで、もちこの個のエネルギーもあるんだけど、

    …自然との一体感、…これはこういう言葉はあまり好きじゃないんですけど、

安田: 笑 スピリチュアルな感じに誤解されそう

加藤: 笑

    まわりに、ノれる。雨が降っても山があっても、そこに…大変な思いをして坂をのぼるというよりも

    何かうまいう具合にノれる?上手く言えないのですが。

    前はもちこしか見てなかったな、と。でも前も稽古の時に、安田さんは「もちこはどういうところ

    を走ってるの?」というのはすごく言ってくれてたんだけど…想像はしたけど…。

    前より、もちこがいる周りにも…

    もちこはもちこの、思いや生活がある。山にも山の、空には空の営みがあるんだよなー…というの 

    が。それをどうしていくのかというのはわからないんですけど、それが前とは全然違うな、と。

    でも、でもこの前読み直したらやっぱりもちこのエネルギーがすごいな~と思ったからやっぱり走 

    る、ところからやってみた方がいいのかな?

    あと、突き落とされてしまってから、もちこがつつじの花になるまでの間…?っていうのはどういう

    世界なんだろうというのは気になるところです。

安田: 人間としてはおそらく死んでいる…

加藤: そうなんですよね。で、毎年つつじが咲くじゃないですか。くりかえし咲く…。もちこ自身がという

    か、もちこを見ていた人たちの思いがそうさせるのかな?とか。まとまらないですけど。死んでし

    まって残念でした…というのに、もういっこ何かあるのかな~とか。

 

安田: 「置きもの」と「置きものじゃない」時の体をどうやったらいいんだろう、というのが一番の…最 

     重要課題なんだけど。

    …それが見せたいところではない。ただ、必要だからやんなきゃいけないと思ってるだけで。見せた 

    いのはそこを踊り分けられる私を見せたいわけじゃないから…

    風景、を出したいんだよね。だからソロ狸、というよりは。まわりに野良猫がいて。…代田橋から羽 

    根木公園辺りの風景の中の、野良タヌキがいて、置き物がいっぱい置いてあってという、そこの風

    景をやりたいんだな、というのが。

加藤: ささらほうさらを知って、ささらや安田さんの公演を見るときに、『真平』のときに一番思ったん 

    ですけど、まわりに…いろんな生き物がいるように見えて…安田さんはいて、一人いるんだけど。

    後ろが見えるというか感じることが多くて。そういうのって後ろに何かおいているわけではないじ

    ゃないですか。

安田: 野外だからさ、いろいろそういう風に見える自然…

    この間の『ロマンス1.5』もそうだけど、屋外っていうのは勝手に景色がうつってくれるから 

    ね。シンクロするとそう見えたり、っていうのはあると思うんだ。

    だから劇場借りてやる時と全然違う。

加藤: そうかあ。そういうことがあるのか~。

安田: 思い込みの強さでいける部分もあるとは思うんですよ。

    変な言い方だけど。言い方が強引ですけど。自分が置かれている場所を意識して動いているか、っ   

    ていうので本当に正確には伝わらないだろうけど、「何かのなかにいるんだな」位の事を人に感じ  

    てもらうということは出来るような気はするんだけど。

    …結局もちこパワーなんですよ。そういうのって。どんだけ本気でそこにいるか。って、そういう話   

    になっちゃう気がする。    

    私は大してソロをやりたい人間ではないんだよなー。

    みんなでこういう踊りやって、こういうシーンを…みたいなのが好きだからさ。…狸ばやしの稽古ば   

    っかりしていたいもん 笑

加藤: この間は狸ばやしだったけど、猫…まわりの猫やってみたい。

安田: 今、大雑把だしとりあえず取っ掛かりが無いから動きのネタを民話から持ってきて、ってことがあ 

    るんだけど、じゃあそこでいろんな民話をパラパラやって見えるのも楽しいけど、民話のシーンが

    見せたいのじゃなくて、今はまだ言わないけど…

    トレジャーの時に、海賊たちがやっていることをオウムがやって見せるっていうのと一緒…あれも中 

    途半端だったと思うんだけど。

    注:2018年公演、“Tresure Island”

       

     時空の違う世界がふたつあるじゃん。たぬきち側だったら一緒に暮らす野良猫たちが集まって宴会 

    始めたら民話つないだ踊りになる…みたいなのが、もちこの世界だったら何かな。例えばもちこが初  

    めて恋をしたお祭りとかの場所の宴会が、そういう踊りになってる…ような。

    お祭りの踊りっていうところと、崖下のつつじとかそのあたり、群舞?…が今と、もちこの民話が何

    時代か知らないけど、繋いじゃった瞬間みたいな、かな。

    山にいるはずの生き物が東京の世田谷とか杉並のど真ん中に暮らしていたり、キャラクター化され  

    たものが人間の家々に置かれてる、っていうのと…

    強引にじやなくて、ちょっと繋がればいいなと思うんだけど。どこが出入口かわかんないんだけ 

    ど。

 

    …恋ごころとおどりだよ。笑。何かの線がつながる回路が恋ごころとおどりになっちゃってる。

    でも、どうやっていいかわかんないね。笑。

 

     (2022年12月29日)